男性ソロ部門で同業者や声楽家から圧倒的な支持を集め続けるのが玉置浩二さんです。なぜ彼の歌声はこれほどまでに人の心を揺さぶるのか、音楽的な構造を紐解くと3つの明確な要因が存在します。
第1に、母音ごとの響きの均一性と子音の丁寧な発音です。玉置さんの歌唱は、歌詞の1文字1文字が耳へ滑り込むように設計されており、ささやくような弱音(ピアニッシモ)であっても会場の最後列まで明瞭に届きます。これはクラシックのベルカント唱法にも通じる高度な身体の使い方によるものです。
第2に、感情と完全に同期したピッチコントロールです。機械的な音程チェッカーでは測れない「意図的な微小ベンド(音のずらし)」を駆使し、切なさや喜びを音程の揺らぎで描写します。単に音程が合っているだけの歌唱とは一線を画す、表現力圧倒的ボーカリストたる所以です。
第3に、倍音(ハーモニクス)の豊富さです。声帯振動の波形を分析すると、低音域から中高音域にかけて豊かな倍音が均等に含まれており、伴奏がアコースティックギター1本でもオーケストラに匹敵する音圧と温かみを生み出します。