ふるさと納税の返礼品やお取り寄せの普及により、自宅でシャトーブリアンを調理する機会が増えました。しかし、高価な肉だからと気負ってフライパンで強火加熱し、外側を焦がして中を生焼けにしてしまう、あるいは焼きすぎてパサつかせてしまう失敗が後を絶ちません。厚切り肉の火入れには科学的な法則があります。
【ステップ1:焼く前の「完全常温化」が成否の8割を握る】
冷蔵庫から出したばかりの冷たい肉を熱いフライパンに投入するのは厳禁です。中心温度が低すぎると、外側が焦げても中は冷たいままになります。調理の30分〜1時間前には冷蔵庫から出し、室温(約20℃前後)に戻してください。塩・黒胡椒を振るのは、フライパンに入れる直前です。早く振りすぎると浸透圧で貴重な肉汁が流出してしまいます。
【ステップ2:弱火〜中火での丁寧な焼きとアロゼ】
厚手の鉄フライパンを温め、牛脂を薄く引きます。強火ではなく「弱めの中火」で肉を静かに置きます。片面につき2分ほど、表面に薄いキツネ色の焼き色がつくまで動かさずに加熱します。ひっくり返したらバターをひとかけ投入し、溶けたバターと肉汁をスプーンですくい、肉の上面に回しかける「アロゼ(Arroser)」を繰り返します。これにより、乾きやすい上面を保湿しながら、包み込むように熱を浸透させます。
【ステップ3:焼いた時間と同じ長さの「予熱レスティング」】
両面を香ばしく焼き上げたら、すぐに包丁を入れてはいけません。熱によって肉の中心に集まった肉汁が、切った瞬間にまな板へすべて流れ出てしまいます。肉を取り出し、アルミホイルでふんわりと二重に包み、温かい場所で「加熱した時間と同じ時間(約4〜5分)」休ませます。この予熱調理の間に、肉汁が筋繊維全体に再び行き渡り、ロゼ色(美しいピンク色)の完璧なミディアムレアに仕上がります。