多くの人が「キューピー3分クッキングのテーマ」と認識しているあの曲の正式名称は、『おもちゃの兵隊の行進』(原題:Parade der Zinnsoldaten / 作品番号123)です。作曲したのは、19世紀末から20世紀前半のドイツで活躍したオペレッタ作曲家のレオン・イェッセル(Léon Jessel)。ピアノ独奏曲として1897年に生み出され、後に華やかな管弦楽曲へと編曲されて世界的なスタンダードナンバーとなりました。
曲調は非常に無邪気で愛らしく、玩具箱から抜け出したブリキの兵隊たちがリズミカルに行進し、夜明けとともに慌ただしく箱へ戻っていく様子をコミカルに描写しています。しかし、この親しみやすい名曲の生みの親であるレオン・イェッセル本人の生涯は、楽曲の明るさとは裏腹に過酷なものでした。ユダヤ系の出自であったイェッセルは、ナチス政権の台頭によって作品の上演や出版を禁じられ、1941年にゲシュタポ(秘密国家警察)に拘束。厳しい拷問を受けた末、翌1942年にベルリンの病院で非業の死を遂げています。
こうした暗い時代背景を乗り越え、戦後も世界各地で演奏され続けたこの小品は、海を越えた日本のテレビ黎明期において、生活に密着した料理番組のシンボルとして奇跡的な再評価を受けることになりました。