映画の吹き替えにおいて、ジョニー・デップの演技をトレースすることは声優界でも最難関の一つとされます。デップは声だけで芝居を作るのではなく、指先の細かな震え、目線の泳ぎ方、大げさな身体表現といったフィジカルな演劇性(フィジカル・シアターの要素)をふんだんに取り入れる俳優だからです。
ここに宮野真守が起用された最大の必然性があります。劇団ひまわりで子役時代から培った舞台経験をはじめ、ミュージカル『テニスの王子様』『ウェスト・サイド・ストーリー』『王家の紋章』、そして劇団☆新感線の舞台など、宮野は日本のエンターテインメント界屈指の「身体ごと表現するミュージカル俳優」としての顔を持っています。
ウォンカの歌うようなセリフ回し、突然のリズムチェンジ、芝居がかった身振り手振り。これらは声優専業のアプローチだけでは埋めきれない領域であり、ミュージカルの舞台で全身を使って観客を魅了してきた宮野真守のバックボーンがあったからこそ、ジョニー・デップの肉体表現と完全に共鳴することが可能となったのです。