本殿金堂から奥の院魔王殿へと至る参道は、平安末期の歴史絵巻がそのまま息づく回廊です。源義経が幼少期に「牛若丸」として預けられ、平家打倒を誓って武芸に励んだ遺構が随所に残されています。
本殿を出て山道に入ると、まず現れるのが「息つぎの水」です。牛若丸が毎夜、奥の院へ通う途中で喉を潤したと伝わる岩清水であり、千年の時を経た現在も澄んだ水が湧出しています。さらに進むと、平泉へ下る牛若丸が名残を惜しんで背を比べたという「背比べ石」が静かに佇んでいます。
その先、参拝者が息を呑む絶景が「木の根道(きのねみち)」です。杉の大樹が地表一面に縦横無尽に根を張り巡らせた異様な光景が広がります。これは鞍馬山の地質が極めて硬い石灰岩に覆われているため、樹木の根が地下深くへ潜ることができず、生き延びるために地表を這うように発達した自然の驚異です。牛若丸はこの凹凸のある根を飛び跳ね、鞍馬天狗(僧正坊)から兵法と跳躍術の手ほどきを受けたと伝えられています。
木の根道を過ぎて窪地へ下りると、天狗たちが集会を開いたとされる「僧正ガ谷(そうじょうがたに)」の広場に到達します。ここは義経堂が建立されている神聖な谷間であり、魔王殿へと向かう最後の結界のような重厚な空気が漂っています。