松本の食堂文化を語る上で、外せないのが「山賊焼き」だ。鶏の一枚肉をニンニクや醤油ベースのタレにじっくり漬け込み、片栗粉をまぶして豪快に揚げた名物料理。外はザクザク、中はジュワッと肉汁が溢れ出るこの逸品は、多くの食堂で看板メニューとして君臨している。皿からはみ出すほどのボリューム感は、初めて目にする客を思わず圧倒させる。
だが、魅力はそれだけにとどまらない。信州そばの名店がひしめく地域でありながら、大衆食堂が提供する「食堂のラーメン」や「モツ煮定食」、「自家製味噌の味噌汁」のレベルが極めて高いのだ。寒冷な気候を乗り切るために発達したしっかりとした味付けと、豊かな湧き水が育む食材の新鮮さ。気取らないメニューの数々に、この土地ならではの風土が凝縮されている。