竹久夢二と大正ロマンの光影|代表作『黒船屋』の恋と2026年展覧会

竹久夢二と大正ロマンの光影|代表作『黒船屋』の恋と2026年展覧会

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竹久夢二の数ある代表作のなかでも、最高傑作として名高い名画が『黒船屋』です。黒い着物をまとい、艶やかな黒猫を胸に抱いた女性が物憂げな視線を投げかけるこの作品は、1918年(大正7年)から1919年(大正8年)にかけて制作されました。

本作のミューズとなったのが、夢二が生涯で最も深く愛したとされる女性・笠井彦乃です。東京・日本橋の紙問屋の令嬢であった彦乃と夢二は惹かれ合いますが、年の差や夢二の奔放な女性関係を嫌った厳格な父親から猛烈な反対を受けます。ふたりは京都での密会や金沢への逃避行を敢行し、夢二は彼女を「山へ通ふ路(山路)」と呼び、自らを「川」になぞらえて愛を深めました。

しかし、幸せな時間は長くは続きませんでした。彦乃は当時不治の病と恐れられていた肺結核を発症し、御茶ノ水の順天堂医院へ強制収容されます。面会すら許されない絶望的な状況のなか、夢二が引き裂かれた愛の痛切な祈りを込めて描き上げたのが『黒船屋』でした。1920年(大正9年)、彦乃は23歳の若さでこの世を去り、夢二の心には生涯消えない深い傷痕が残されることとなりました。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。