世間一般において、中島健人には長らく「セクシー」「王子様」というパブリックイメージが先行してきました。バラエティ番組で見せる完璧なサービス精神や甘いセリフがトレードマークだったため、一部のネット言説では「どのドラマに出ても中島健人そのものに見えてしまうのではないか」という穿った見方をされる時期もありました。
しかし、これは彼のフィルモグラフィを深く追っていない層による誤解に過ぎません。その転換点となった代表例が、フジテレビ開局60周年特別企画ドラマ『砂の器』(2019年)で演じた天才作曲家・和賀英良役です。過去のトラウマと殺人を犯した罪の意識に苛まれ、ピアノに向かいながら狂気と絶望の涙を流す演技は、従来のキラキラした輝きを完全に消し去り、業界内でも高い評価を受けました。
さらに『しょせん他人事ですから』で見せた、他者への共感をあえて切り捨てたフラットなトーンは、彼の表現の幅が「熱血」や「王子様」の対極にある「ニヒリズム」や「静寂」にまで広がっていることを証明しました。自らの強烈なパブリックイメージを逆手に取り、それを脱ぎ捨てることで生まれる落差こそが、近年の彼の最大の武器となっています。