かつて成田空港や羽田空港を飛び立ったドイツ行き直行便は、新潟上空から日本海を渡り、広大なシベリア上空を一直線に横断するルートをとっていました。この「シベリア横断ルート」は地球上の大圏コース(最短距離)に近く、偏西風の影響を考慮しても、羽田からフランクフルトまでは約11時間30分〜12時間程度で到達できていました。
この状況を一変させたのが、2022年2月に端を発したウクライナ情勢に伴う相互の領空閉鎖です。EU加盟国とロシア双方が領空通過を禁止したことを受け、日本とヨーロッパを結ぶ定期旅客便もシベリア上空の飛行が不可能となりました。安全確保を最優先するため、航空各社は航路の大規模な再編を余儀なくされたのです。
現在採用されている主な迂回ルートは大きく分けて2系統存在します。1つは日本を出発後、中央アジア(カザフスタンやウズベキスタン等)、南コーカサス、トルコ上空などを経由してヨーロッパへ入る南回りルート。もう1つは、アラスカからベーリング海峡、グリーンランド、北極海上空を抜けて南下する北極回りルート(北回り)です。
これらの迂回により、飛行距離は従来に比べて約1,500〜2,500キロメートルも延伸しました。さらに航空力学と気象条件が重くのしかかります。地球の中緯度地域には西から東へと猛烈な偏西風(ジェット気流)が吹いており、日本から西にあるドイツへ向かう往路便は、常に強い向かい風に抗いながら飛行しなければなりません。この物理的制約が、ドイツ飛行機時間なぜ長い理由の核心です。距離の増加と逆風のダブルパンチにより、往路では約14時間〜15時間半という長時間のフライトが標準となっています。