京マチ子を語る上で欠かせないのが、世界三大映画祭を制覇した輝かしい実績です。彼女が出演した作品が次々と国際的な栄冠に輝いたことから、国内外で「グランプリ女優」という異名が定着しました。
その原点となったのが、1950年公開の黒澤明監督による名作映画『羅生門』です。平安時代の陰惨な事件の当事者となる妻・真砂役を演じた京マチ子は、眉をすべて剃り落とし、平安絵巻のような独特のメイクと狂気を帯びた迫真の演技を披露。本作はヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を獲得し、日本映画の存在を世界に知らしめる歴史的快挙を成し遂げました。
黒澤監督の現場は一切の妥協が許されない過酷なものでしたが、彼女は泥だらけになりながら鬼気迫る演技を全うし、名匠からの絶大な信頼を勝ち取りました。続いて1953年には溝口健二監督の『雨月物語』で亡霊・若狭を妖艶に演じてヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞を獲得。翌1954年の衣笠貞之助監督作『地獄門』ではカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞するなど、世界最高峰の舞台で立て続けに主役を務めるという、日本映画史上類を見ない偉業を打ち立てました。