百花王学園に突如として現れた転校生・蛇喰夢子。彼女の素性における最大の鍵は、生徒会長・桃喰綺羅莉(ももばみ きらり)を頂点とする巨大な血族「百喰一族」の血筋を引いているという点にあります。
物語の進展に伴い明かされた蛇喰家の秘密によれば、かつて蛇喰家は一族内の熾烈な権力闘争に敗北し、事実上没落。夢子の姉は精神を病んで長期入院を余儀なくされ、その莫大な医療費と一族への上納金を夢子が個人で負担し続けているという過酷な背景が存在します。一般的なピカレスクロマンであれば「一族への復讐」「姉の無念を晴らすこと」が主人公の行動動機となるのが定石です。
しかし、夢子の恐ろしさはその蛇喰夢子の目的の異質さにあります。彼女は復讐心に突き動かされているのではなく、単に「対等に命を削り合える究極のギャンブル」を求めています。百花王学園に編入したのも、生徒会長の桃喰綺羅莉という極上のギャンブラーと同じ空気を吸い、予測不能の狂気に身を投じるためでした。破滅を恐れず、むしろ「破滅するかもしれない恐怖」そのものを楽しむ姿勢こそ、彼女が周囲から怪物として恐れられる所以です。