ネット上でしばしば推奨される「熱湯でサッと下茹でする」「電子レンジの解凍モードを使う」という手法には、料理工学の観点から大きな落とし穴が存在します。
第一に、電子レンジでの解凍です。マイクロ波は水分に反応して分子を振動させるため、シーフードミックスのように大きさや厚みが不揃いな食材(小粒のエビと平たいイカ、厚みのあるアサリなど)に照射すると、熱の偏りが生じます。イカの端だけが沸騰して白く硬化する一方、中心部は凍ったままという「局所的オーバークック」が発生し、この過程で生臭さが一気に活性化してしまいます。
第二に、グラグラと沸騰した湯で下茹でする手法です。表面の汚れや生臭さは落ちるものの、湯の中に旨味成分の主たるアミノ酸がことごとく溶け出してしまいます。茹で汁をすべて捨てる料理であれば、旨味を自ら捨てていることと同義です。どうしても短時間で下処理を行いたい場合は、熱湯に浸すのではなく、前述した「ぬるま湯(35℃程度)に溶かした3%食塩水」に10分浸すアプローチが、唯一科学的に正当性を持つショートカット法です。