臨月が深まるにつれ、重たいお腹による腰痛や不眠、恥骨痛に悩まされ、「早く産んで楽になりたい」という感情が芽生えるのは極めて自然な人間心理です。ネット上では「オロナミンCを飲むと陣痛が来る」「焼肉を食べるとお産が進む」といった陣痛ジンクスや、過度なスクワットを推奨する情報が絶えません。
医学的な見地から言えば、特定の食品が陣痛を誘発するという科学的根拠は一切立証されていません。焼肉などの高脂質・高カロリー食を出産直前に過剰摂取することで、胃もたれや分娩時の悪心・嘔吐を引き起こすケースすらあります。
「早く産むために毎日100回スクワットをしている」という妊婦の投稿も散見されますが、これには重大なリスクが潜んでいます。理学療法士および周産期リハビリテーションの専門家は次のように指摘します。
「臨月の身体は、リラキシンというホルモンの影響で骨盤周囲の靭帯が極限まで弛緩しています。その状態で深く腰を落とす無理なスクワットを行うと、恥骨結合離開や仙腸関節痛、膝関節の損傷を招き、産後に歩行困難へ陥るリスクがあります。転倒してお腹を強打すれば、常位胎盤早期剥離という命に関わる事態になりかねません」
正期産の運動として適しているのは、激しい筋トレではなく、平坦な道での軽いウォーキング(30分程度)、椅子や手すりにつかまって行う浅いスクワット、股関節を柔軟にするストレッチです。お腹が張ったら即座に座って休むことが鉄則であり、疲労困憊になるまで追い込む行為は本末転倒です。