たまごっちの誕生は1996年に遡る。株式会社バンダイの真板亜紀と、企画会社ウィズの横井昭裕が生み出したこの携帯型育成ゲームは、単なるデジタルペットの枠を超え、持ち歩く「命のシミュレーション」として人々の生活に溶け込んだ。肌身離さず持ち歩くという行為そのものが、ユーザーとキャラクターとの間に強烈なエモーショナル・ボンドを形成する。
玩具産業の歴史において、ここまで持ち主が外装をデコレーションし、首から提げ、保護することに熱中したプロダクトは他にない。当時も手編みの靴下に入れたりビーズで飾ったりするブームがあったが、ケースを着せるという行為は、単なる「物理的な保護」ではなく「愛着の表現」そのものなのだ。100円ショップのアイテムを駆使して自分だけのお出かけスタイルを構築する現在のムーブメントは、30年近く前に横井と真板が蒔いたカルチャーの種が、いまなお豊かに花を咲かせている証拠と言える。