こども家庭庁の創設構想は、もともと2021年春、菅義偉政権下で自民党の若手・中堅有志や山田太郎参議院議員らが提案した「子ども庁」が起点でした。縦割り行政の弊害を打破し、厚生労働省の保育部門や文部科学省の幼稚園部門、警察庁の児童虐待対策などを一本化し、大人の都合ではなく子どもの権利と幸福を最優先する(チルドレン・ファースト)行政組織を目指したものです。
ところが同年12月、自民党内の総務会や政務調査会の審議において、党内保守派から猛烈な巻き返しが起きました。「子どもだけを独立して扱うと、親の養育責任や家庭教育がおろそかになる」「子どもは家庭という温床の中で育つものであり、伝統的な家族の絆を弱める懸念がある」といった反対論が続出したのです。
当時の会議に出席した議員の手記や報道各社の取材メモによると、議論の場では「家庭を抜きにした子ども政策などあり得ない」との激しい主張が飛び交い、結果として政府原案にあった「子ども庁」はわずか数日のうちに「こども家庭庁」へと修正され、閣議決定されました。ひらがなの「こども」と漢字の「家庭」が同居する特異な組織名は、こうして妥協の産物として誕生しました。