ユネスコ無形文化遺産にも登録されているメキシコ料理だが、2026年の今、最もホットな議論を生んでいるのは最高級レストランではなく、街角の「メキシカン・ヘリテージ(原種トウモロコシ)」を守る小規模農家と料理人たちのネットワークだ。
ミシュランの星を獲得した高級店がひしめくポランコ地区の一角から、徒歩で数分のローカル市場へと足を伸ばせば、そこには異次元の食体験が待っている。遺伝子組み換えトウモロコシの侵入に抗い、何世代にもわたって継承されてきた「クリオジョ種」のトウモロコシを使ったタコスは、ひと口噛みしめるだけで大地の滋味が口いっぱいに広がる。単なるノスタルジーではない。食の主権を取り戻そうとする彼らの営みは、まさに現在進行形の食文化の戦場だ。