Q1:現在、日本国内の病院で個人の希望によって天然痘ワクチンを接種することはできますか?
A1:一般の医療機関で希望による定期・任意接種を受けることはできません。天然痘ワクチン(LC16m8など)は国家の危機管理資材として厳重に管理・備蓄されており、バイオテロ発生時や、エムポックス感染者への濃厚接触者など、公衆衛生上特別な事態において国や自治体の指示のもとでのみ限定的に供給・接種されます。
Q2:昭和50年以前に生まれた親の腕に種痘の跡があります。今でも天然痘にかからないのでしょうか?
A2:生涯にわたって完全な感染予防効果が持続しているわけではありません。一般に種痘の十分な発症予防効果は接種後数年から10年程度とされ、数十年が経過した現在では血中抗体価は大幅に低下していると考えられています。ただし、細胞性免疫の記憶により、万一の感染時に重症化を防ぐ効果は一定程度残存している可能性が研究で示唆されています。
Q3:水ぼうそう(水痘)やおたふくかぜにかかったことがあれば、天然痘にも免疫がありますか?
A3:全く効果はありません。「水痘(すいとう)」は名前に「痘」の文字がつき、水疱ができる症状も似ていますが、水痘・帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス科)という全く別の病原体による感染症です。天然痘やエムポックスが属する「オルソポックスウイルス属」とは生物学的な交差免疫が一切成立しないため、水痘の罹患歴や水痘ワクチンによる予防効果は天然痘には及びません。
Q4:エムポックス(旧称サル痘)が変異して天然痘になる危険性はありますか?
A4:エムポックスが変異によって天然痘ウイルスそのものに変化することはありません。両者は同じオルソポックスウイルス属に属する近縁種ですが、数万年以上の進化の過程で遺伝子配列が明確に分化しています。ただし、エムポックス自体の感染力増や毒性変化については国際的に厳重なゲノムサーベイランスが継続されています。