時計の針を少し巻き戻そう。かつて西村博之氏が開設した2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)は、アングラな空気感を漂わせながらも市井の人々の本音を引き出す言論空間として機能していた。2000年代初頭、純愛ブームを巻き起こした『電車男』のヒットは、名もなき群衆の書き込みが巨大なエンターテインメントを生み出す決定的な証左となった。
その広大な掲示板群のなかで異彩を放ち始めたのが「なんでも実況J」、通称なんJだ。もともとは実況板の一つに過ぎなかったこの場所が、独自の猛虎弁や乾いたシニシズム、そしてスポーツへの狂信的な熱量を融合させ、ネット界隈で最も治安が悪く、かつ最も中毒性の高いコミュニティへと変貌を遂げた。雑多な感情が渦巻くスレッドから鋭利な発言だけを抜き出し、再構築する文化が定着するまでに時間はかからなかった。