「蜘蛛に噛まれた箇所が赤く腫れ、ズキズキと熱を帯びてきた」「時間が経つにつれて痛みが周囲へ広がっている」――このような症状が現れた場合、決して軽視して放置してはいけません。蜘蛛の咬傷によって生じる生体反応は、大きく分けて「牙による物理的な刺創」「注入された毒素による局所・全身反応」「細菌感染(二次感染)」の3段階に分類されます。
咬傷直後は小さな点状の出血斑や軽い発赤にとどまるケースが目立ちます。しかし、毒性を持つ蜘蛛であった場合、咬傷から15分〜1時間ほど経過した頃から局所の鈍痛が激痛へと変貌します。毒素に含まれる酵素や神経毒が皮下組織を破壊し、周囲の末梢神経を直接刺激するためです。放置することで毒素がリンパ管を通じて全身へと巡り、リンパ節の腫れ、倦怠感、発汗、血圧上昇といった全身性の中毒症状へ進行する危険性があります。
さらに深刻なのが、組織融解作用を持つ毒素によって皮膚が壊死を起こし、中央部が陥没して潰瘍化するパターンです。初期には赤みとともに水ぶくれ(水疱)が形成され、それを雑菌だらけの手で潰してしまうと、黄色ブドウ球菌などが侵入して蜂窩織炎(ほうかしきえん)を併発します。軽微な虫刺されと自己判断して放置した結果、患部の切開排膿や長期の点滴治療を余儀なくされる事例は後を絶ちません。