フォークスが遺したもう1本の尾羽を宿していた杖の持ち主こそ、かつて魔法界を恐怖の底に突き落とした闇の帝王・ヴォルデモート(トム・リドル)でした。ヴォルデモートの杖は「イチイの木、13.5インチ、不死鳥の尾羽」であり、ハリーの杖とは同一の母体から生まれた「兄弟杖(Twin Cores)」の関係にありました。
杖学(Wandlore)の基本法則において、同じ存在から採られた芯材を持つ杖同士は、決して互いを真に攻撃することができません。この法則が決定的な形で炸裂したのが、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のリトル・ハングルトンの墓地における決闘シーンです。復活を遂げたヴォルデモートが放った死の呪文と、ハリーが放った武装解除呪文(エクスペリアームス)が空中で衝突した瞬間、杖同士の激しい反発と共鳴によって「直前呪文(プライオリ・インカンタテム)」という超常現象が引き起こされました。
二振りの杖は眩い光の糸で結ばれ、精神的な力比べに発展。ハリーの強い意志がヴォルデモートの杖を押し戻した結果、ヴォルデモートの杖が過去に命を奪った犠牲者たち——セドリック・ディゴリー、フランク・ブライス、バーサ・ジョーキンズ、そしてハリーの両親であるジェームズとリリー・ポッターの「影(エコー)」が逆再生のように次々と具現化しました。兄弟杖の共鳴がなければ、ハリーはこの墓地で確実に命を落としていたはずです。
ヴォルデモートはこの思わぬ敗北に戦慄し、兄弟杖の制約を打破するためにルシウス・マルフォイの杖を強奪して使い、さらには伝説の「ニワトコの杖」を求めてダンブルドアの墓を暴くという暴挙へと駆り立てられていくことになります。