ネット上の掲示板やSNSで頻繁に交わされる「グローブ座の特定の席は見えにくい」という評判。この噂の真相を探ると、劇場の歴史的構造に起因する明確な死角(ブラインドスポット)の存在が浮き彫りになります。
視界トラブルが集中するのは、2階および3階の「サイドシート(サイドバルコニー席)」です。円形劇場であるがゆえに、サイドシートは舞台面を正面から捉えるのではなく、舞台袖を覗き込むような鋭角な視線になります。その結果、以下のような見切れ現象が発生します。
- 同サイドの舞台奥が見えない:自分が座っている側(下手サイドなら舞台下手奥、上手サイドなら舞台上手奥)で繰り広げられる演技や、奥のセット内にいる演者がプロセニアムアーチの壁面に遮られて視界から完全に消えます。
- 手すりと防護ネットの干渉:3階のサイドシート前列には高い転落防止バーが設置されており、背筋を伸ばして深く腰掛けると、手すりの鉄骨が舞台中央を横切るラインに入り込みます。
- 音響の偏り:メインスピーカーの指向性エリアから外れやすいため、セリフの直接音よりも対面の壁面から反射してくる間接音が強調され、人によっては言葉の明瞭度が低く感じられる場合があります。
多くの観劇者が東京グローブ座の見切れ席の評判を気にする理由はここにあります。しかし、これらは「欠陥」というよりも、シェイクスピア時代の円形劇場の臨場感を再現した建築的個性です。サイド席は舞台袖の出ハケの瞬間や、役者が舞台裏へと引き上げる際のオフの表情を垣間見ることができるため、コアな舞台ファンにとっては唯一無二のプレミアムシートとして評価される側面もあります。