ネット上で「怖すぎる」「鳥肌が立った」と拡散されたこの現象の発端は、デジタル画像処理ソフトによるポスター画像の明度・コントラスト調整でした。通常の印刷物やスマートフォンの低輝度画面では、背景の大部分は完全な「黒(夜空)」として認識されます。暗闇の中で笑顔を見せる節子と、それを見つめる清太の姿が前面に押し出され、誰もが「夏の夜のホタル狩り」の切ないワンシーンだと受け止めます。
ところが、画像のガンマ値や明度を極端に引き上げると、漆黒に見えていた夜空の上部にB29爆撃機の巨大な機影が露わになります。さらに注視すると、散りばめられた光の軌跡には明確な違いがあることに気づかされます。ふんわりと丸みを帯びて漂う光がある一方で、上空から斜め一直線に降り注ぐシャープな光の筋が緻密に描き分けられているのです。
つまり、節子と清太を照らしていた光の正体は、美しいホタルの光であると同時に、神戸の街を焼き尽くした焼夷弾の閃光(火垂る)そのものでした。タイトルの「火垂る」という漢字表記に込められた真の意味が、ポスターのグラフィックデザインそのものに組み込まれていたという事実は、多くの人々に衝撃を与えました。