モンキーレンチを扱う上で最も基本的でありながら、最も見落とされがちな要素がモンキーレンチの回す向きです。モンキーレンチのヘッドは、本体と一体成形された頑強な「上あご(固定ジョー)」と、ウォームギアによってスライドする「下あご(可動ジョー)」の2つで構成されています。
ボルトを回す際の絶対原則は、「荷重を下あごの方向(可動部側)に向けて倒す・引く」ことです。下あご側に向かって回すと、ボルトから受ける反力は強固な上あごの根元全体で受け止められ、下あごは本体レールに押し付けられる形で密着します。これにより、二面幅の狂いが生じず、ボルトの角に均等なトルクを伝えることができます。
逆に、上あご側に向かって力を掛けてしまうと、ボルトの反力が下あごを外側へ押し広げる力として働きます。その結果、精密に噛み合っていたジョーがわずかに開き、ボルトの頂点に力が集中してモンキーレンチでボルトがなめる原因となります。特に真鍮製配管ナットやアルミ製パーツなど、硬度の低い金属を扱う現場では、回転方向のミスが即座に部品全損のトラブルへと直結します。