入隊希望者や新任隊員の間で度々話題になるのが「求人票や説明会で聞いた月給より、実際の手取りが大幅に少ない」という疑問です。このギャップが生じる背景には、公務員共通の法定控除と、自衛隊独自の福利厚生・積立システムによる「給与天引きの多さ」が存在します。
例えば、額面月給が22万円の隊員の場合、一般的な法定控除として所得税、住民税、防衛省共済組合掛金(健康保険および厚生年金相当)が差し引かれ、この時点で約3万5,000円〜4万円が控除されます。これに加えて自衛隊の現場では、以下のような独自項目が天引きされます。
- 防衛省共済組合の団体保険・積立預金:民間よりも割安で手厚い生命保険・傷害保険(団体扱い)や、高利率の共済貯金への自動積立。
- 隊内厚生費・隊費:部隊ごとの親睦会費、厚生施設の維持費、部隊章・行事用備品の共同購入費(月額2,000円〜5,000円程度)。
- 被服・装具の私物整備費:官給品以外の機能性インナー、ブーツ手入れ用品、演習用私物装備の積立購入。
これらが合算される結果、額面22万円に対する実際の手取り振込額が約15万〜16万円台まで目減りすることがあり、これが「手取りが少ない」という噂の正体です。しかし、独身の士・曹が基地内の寮(営内)で暮らす場合、家賃、水道光熱費、1日3食の食費がすべて無料です。民間企業の会社員が手取り20万円から家賃7万円・食費4万円・光熱費1.5万円を支払うと手元に7.5万円しか残らないのに対し、営内自衛官は手取り15万円のほぼ全額を「自由に使える可処分所得」として手元に残せます。天引き後の見かけの数字と、実質的な経済的余力には大きな開きがある点を見落としてはなりません。