ふたりの出会いは、今から30年以上前の1990年代半ばにまで遡ります。大学卒業後に一般企業へ就職したものの、わずか数日で退職して役者の道を志した佐藤二朗が25歳、妻が21歳の頃でした。入所した俳優研究所の同期生として出会ったふたりは、芝居談義を交わすなかで意気投合し、ほどなくして交際へと発展しました。
当時の佐藤二朗は、まったく芽の出ない無名俳優に過ぎませんでした。アルバイトで食いつなぎながら劇団を旗揚げし、将来の保証など何一つない極貧生活を送るなか、ふたりは約8年間にも及ぶ同棲生活を経験しています。家賃の支払いすら事欠く日々において、妻は佐藤の才能を疑うことなく、愚痴や弱音を聞き続け、生活面でも精神面でも彼を支え続けました。
映画監督の堤幸彦に見出され、ドラマ『ブラック・ジャックII』や『TRICK』への出演を足がかりに少しずつ役者としての仕事が軌道に乗り始めた2003年、佐藤が34歳の年にふたりは正式に婚姻届を提出しました。ブレイクの兆しが見えたから結婚したのではなく、人生のどん底を共に歩み、互いの人間性を骨の髄まで知り尽くした末の自然な帰結でした。佐藤がメディアで妻を語る際に漂う独特のリスペクトは、この8年間の「糟糠の苦労」を共闘した戦友意識から生まれています。