医療機関で処方される降圧薬には複数の系統が存在し、それぞれ作用機序が大きく異なる。現在、第一選択薬として広く処方されているのがカルシウム拮抗薬だ。血管平滑筋の収縮を抑えて血管を直接拡張させるため、確実で強力な降圧効果を発揮する。長年の使用実績があり、日本人に対するエビデンスも豊富だ。
一方、心臓や腎臓の保護作用を併せ持ち、現代の処方の中核を担うのがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)である。昇圧物質であるアンジオテンシンIIの受容体をブロックすることで血管を広げ、臓器障害の進行を強力に食い止める。糖尿病や腎疾患を合併している患者に対して特に優先されることが多い。
これと類似した経路を遮断するのがACE阻害薬だ。アンジオテンシン変換酵素を阻害するこの薬剤は、欧米で強固なエビデンスを持つほか、副作用として生じる特有の「空咳(からぜき)」を逆手にとり、高齢者の誤嚥性肺炎を予防する副次的効果を狙って選択されるケースもある。降圧治療は今や、単に数値を合わせるだけでなく、将来的な合併症リスクを先回りして封じ込める多角的な戦略へと進化している。