2015年に表面化したロッテグループのお家騒動は、東アジアの経済ニュースのトップを独占しました。当初、創業者・武雄氏は「日本は長男の宏之、韓国は次男の昭夫」という棲み分けを構想していましたが、事業規模の拡大とともに兄弟間の主導権争いが激化。武雄氏自身を巻き込んだ解任劇と復権劇が目まぐるしく展開されました。
この泥沼の権力闘争において、極めて重要な役割を果たしたのが母・重光初子氏でした。ロッテの支配権は、非上場の資産管理会社「光潤社」がロッテホールディングス(日本法人)の株式を握り、そのロッテHDが韓国ロッテの頂点にあるホテルロッテを支配するというピラミッド構造になっています。
光潤社の株式比率は、長男・宏之氏が50.0%(プラス1株)を握る一方、次男・昭夫氏が約38.8%、そして母・初子氏が約10.0%を保有していました。兄弟が真っ向から対立した際、初子氏の持ち分がどちらにつくかによって局面が左右される極限状態に陥ったのです。
関係者の証言や当時の法廷記録によると、宏之氏が父・武雄氏を担ぎ出して役員解任を主導した際、初子氏はグループの解体・混乱を避けるため、結果として次男・昭夫氏側の経営体制を容認・支持するスタンスを取ったとされています。家族としての情愛と、数十万人規模の従業員を抱えるグローバルコングロマリットの存続という冷徹な現実の間で、初子氏は巨大財閥の母として苦渋の決断を下したと言えます。