楽曲の扉を開く上で、まず知っておくべきは「我逢人」という言葉のルーツです。読み方は「がほうじん」であり、これは曹洞宗の開祖である道元禅師が残した有名な禅語に由来しています。
禅の教えにおいて「我、人と逢う」とは、単なる偶然のすれ違いではなく、「すべての物事や人生の営みは、人と人との出逢いから始まる」という根源的な理(ことわり)を意味します。人との巡り合わせこそが自分自身を形成し、新たな道を開く原動力になるという思想です。
大森元貴はこの古刹の言葉をタイトルに据えながらも、単なる「出逢いの素晴らしさ」といった耳障りの良い美談だけを描くことはしませんでした。人と出逢うことは、時に傷つけ合い、誤解を生み、孤独を浮き彫りにするリスクを伴います。その痛みを抱きとめた上でなお、人と繋がることの価値を叫ぶ点に、本作の真骨頂があります。