山本美香氏が命を落としたのは、2012年8月20日午後(現地時間)、激戦が続いていたシリア第2の都市アレッポのスレイマン・アル・ハラビ地区でした。独立系通信社ジャパンプレスに所属する彼女は、長年の取材パートナーである佐藤和孝氏とともに、反体制派部隊「自由シリア軍(FSA)」の案内で市街地の取材を行っていました。
当時、現場の通りには市民の姿もあり、一見すると小康状態を保っているように見えました。しかし、路地を進んだ瞬間、約20〜30メートル先から迷彩服にヘルメットを着用したシリア政府軍、あるいは親政府派民兵組織「シャッビーハ」とみられる武装集団が現れました。警告もなく、突如として激しい一斉掃射が始まったのです。
佐藤氏の手記や証言によると、銃撃を受けた瞬間に激しい発砲音と爆煙が立ち込め、山本氏と佐藤氏は散り散りになりました。佐藤氏は咄嗟に身を隠しながら山本氏の名前を叫び続けましたが、返答はありませんでした。銃撃戦が収まった後、案内役の部隊が倒れている山本氏を発見し、市内の仮設病院へと緊急搬送しました。しかし、搬送先に駆けつけた佐藤氏が対面したのは、すでに息を引き取っていた彼女の無言の姿でした。