東海道新幹線の象徴であるアイボリーホワイトと鮮烈なコバルトブルー。この組み合わせは、国鉄車両関係規定において車体色がクリーム10号、帯色が青20号と正式に定義されています。この配色が決まるまでには、国鉄臨時車両設計事務所を中心とする技術陣による綿密な試行錯誤がありました。
時速200キロメートルを超える営業運転は、当時の世界で前例のない未知の領域でした。高速で接近する巨大な鉄塊を、保線作業員やプラットホーム上の乗客、踏切跡周辺の監視者が瞬時に「新幹線である」と認識できる識別性が最優先課題として課されたのです。
ベースカラーに純白ではなく、ごくわずかに黄味を帯びたクリーム10号が選ばれた理由は二つあります。一つは、直射日光下における強烈なハレーション(眩惑)を防ぐためです。純白塗装は晴天時の反射が強すぎて対向列車の運転士や保線作業員の視界を奪う恐れがありました。もう一つは、ブレーキ時に発生する微細な鉄粉や架線から飛散するパンタグラフのカーボン粒子による汚れを目立ちにくくする実務上の要請でした。
そして窓周りを引き締める青20号は、日本の澄んだ青空とスピード感を象徴するカラーとして抜擢されました。色彩心理学において青は「信頼感」「正確性」「鎮静効果」を喚起する色であり、未知の超高速鉄道に対して国民が抱く漠然とした不安を払拭する狙いも込められていたと当時の設計関係者は手記で振り返っています。