1980年代後半、日本のテレビ画面を飾ったある映像が人々の心を揺さぶりました。それが、JT(日本たばこ産業)による「1989年マイルドセブンテレビCM」です。夕陽に染まる丘の稜線に、一列に整然と並ぶカラマツの防風林。その詩的で洗練された風景は瞬く間に話題となり、北海道美瑛町の静かな農村を一気に全国屈指の観光地へと押し上げました。
当時の日本はバブル景気の只中。喧騒を離れて北の大自然に癒やしを求める旅行者たちが、カメラを片手にこの地を目指しました。前田真三をはじめとする写真家たちが捉えた美しい丘の表情は、単なる観光地の枠を超え、日本人の郷愁を誘う原風景として定着していったのです。