上板橋駅南口の階段を降り、昔ながらの活気ある商店街角を曲がると、甘く香ばしい生地の匂いが漂ってきます。「ひと本 石田屋」の営業開始は朝9時00分。しかし、その1時間以上も前から店舗の前には整然と行列が形成され始めます。
現地での観察と常連客の証言によると、平日は午前8時15分〜8時30分頃から列が急激に伸び始め、開店を迎える9時00分時点にはすでに30人から50人規模の行列に達することが日常茶飯事です。さらに土曜日や祝日、彼岸、お盆、年末年始などの贈答需要が高まる時期には、午前7時45分〜8時00分の段階で20人以上が並び、開店時には100人近くが連なる光景も見られます。
なぜ、これほどまでに栗どら焼きは短時間で売り切れてしまうのか。その背景には、職人の手仕事による製造限界と徹底した鮮度管理があります。「ひと本 石田屋」では、保存料や余計な添加物に頼らず、工場直売のメリットを活かしてその日の朝に最高の状態で提供することを貫いています。一日に焼き上げられる数には当然ながら物理的な上限があり、需要に対して供給が極めて希少な状態が続いています。
転売防止やより多くの来店客へ届ける配慮から、栗どら焼きには「1人あたり10個〜15個まで」といった個数制限が設けられるのが通例です。先頭から数家族が上限まで買い求めると、一度に数十個単位で在庫が減っていきます。結果として、平日であっても開店から30分から1時間ほど(9時30分〜10時00分頃)、休日であれば9時30分〜9時45分頃には「本日の栗どら焼きは完売いたしました」という札が店頭に掲げられます。確実に手に入れたいのであれば、開店してから向かうのではなく、開店前の待機列に加わることが絶対条件となります。