良かれと思って頻繁に測定している人ほど、無意識に「やってはいけないタイミング」で測り、異常値に怯えてしまうケースが後を絶ちません。特に避けるべき代表例が、食後や入浴後のNGタイミングです。
食事を摂ると、身体は食べたものを消化・吸収するために大量の血液を胃腸などの消化器官へと集めます。その結果、全身をめぐる血液量が一時的に減少し、健康な人でも食後1時間ほどは血圧が10〜20mmHg程度低下する「食後低血圧」と呼ばれる生理現象が起こりやすくなります。逆に、刺激の強い香辛料や塩分、カフェインなどを大量に摂取した直後は交感神経が急激に刺激されて一時的に上昇することもあり、いずれにしても食後すぐの測定は本来の血圧と大きくかけ離れたノイズにしかなりません。
入浴直後も同様に危険なトラップです。温かい湯船に浸かると血管が拡張して血圧は急降下しますが、湯冷めや脱衣所の寒暖差によって数十分後には急激に血管が収縮し、激しい乱高下を起こします。入浴直後の数値を「普段の血圧」と思い込むと、危険な高血圧を見落とす温床になります。入浴後は最低でも45分から1時間以上空け、体温が落ち着いてから測定しなければ意味がありません。
また、降圧薬を服用している人にとって極めて重大なのが服薬前と服薬後の違いです。治療中の患者が朝の血圧を記録する場合、必ず「朝の薬を飲む前」に測らなければなりません。薬を飲んだ後の下がった数値を手帳に記録しても、医師は「薬の効果が24時間しっかり持続しているかどうか」を判定できないからです。朝一番、前日の薬が最も切れてくるタイミングの血圧を把握することこそが、処方の適正化に不可欠な判断材料となります。