音響効果と声の演出も、カオナシの恐怖を決定づける巨大な要素だ。カオナシは自らの声を持たない。かすれた息混じりの「あ、あ…」という絞り出すような音しか発することができないのだ。この声とも言えない漏れ音が、観客の不安神経を直接刺激する。
他者の声を横取りして語り始める後半の展開は、まさに怪奇そのものだ。青蛙の声を借りて横暴に振る舞う姿は、自分の言葉を持たない者が他者の権威や他人の声に依存するグロテスクさを象徴している。絞り出すような低音と、他人の声を借りた甲高い叫びのギャップ。耳から侵入する違和感が、生理的な拒絶反応を引き起こす。