この感情のルーツを辿ると、日本の初期インターネットを牽引した巨大匿名掲示板の混沌に行き当たる。開設者である西村博之が築き上げた2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)は、誰でも匿名で対等に言葉を交わせるアナーキーな言論空間として熱狂的な支持を集めた。そこでは、金銭的利害を排した純粋な悪ふざけや知識の共有こそが至高の美徳とされていた。
風向きが決定的に変わったのは、掲示板のログを無断転載して広告収入を稼ぎ出す「まとめサイト」の台頭だった。株式会社ライブドアなどのポータルやブログサービスがアフィリエイトシステムを整備したことで、名もなき住民たちの書き込みが他人の莫大な利益へと変換される構造が完成した。自分たちの居場所が資本主義の養分にされているという怒りは、やがてサーバー運営権をめぐって西村博之と対立したジム・ワトキンスによる管理体制の移行期を経て、現在も5ちゃんねるの底流に残り続けている。