ビジネス実務において最も議論が分かれるのが、「直属の上司や取引先の役員など、明確な目上の人に対して『ほんの気持ちですが』を使ってよいのか」という点です。結論から言えば、文法的な誤りではないものの、格式高い場面や厳格な上下関係においては軽すぎる印象を与えるリスクを孕んでいます。
「ほんの」という言葉には「わずかな」「ささやかな」という縮小のニュアンスが含まれるため、受け手によっては「目上の自分に対して『ほんの少しの気持ち』程度なのか」と軽薄に捉えられてしまう心理的摩擦が生じる可能性があります。特に正式な贈答品(お中元、お歳暮、昇進祝い、栄転祝いなど)を渡す場面では、表現の格が品物の重みに釣り合わないという違和感を生み出しかねません。
目上の相手に対して敬意を十全に伝えるためには、語彙の格上げが必要です。最も代表的な言い換えが「心ばかりですが」「心ばかりの品でございますが」です。「心」という言葉を前面に出すことで、品物の多寡ではなく「私の誠意や真心」を謙虚に差し出すという格調高い響きとなり、どのような立場の方に対しても失礼なく意図を伝えることができます。