時代ごとに人々が抱く理想や葛藤のイメージは、その時代に消費されたエンターテインメント作品の影響を強く受けている。日本のメディア・エンターテインメント業界が提示してきたフィクションにおける描かれ方も、この20年で劇的な進化を遂げた。
2000年代初頭に反響を呼んだフジテレビのドラマ、女優の水野美紀が主演を務めたドラマ『初体験』に代表されるように、当時の青春ヒューマンドラマの文脈では、20代になっても経験がないことに対する焦燥感やコンプレックス、そして運命的な出会いを通じた成長ストーリーが主軸となることが多かった。そこには「誰もがいつかは通るべきイベント」という社会的無意識が色濃く反映されていた。
対照的に現代の若者が接するグローバルな映像作品、たとえばNetflixが配信し世界中で支持されたドラマ『セックス・エデュケーション』などでは、個人の性的指向の多様性や、断る権利、相手との丁寧な合意形成のプロセスが多角的に描写される。過度なドラマチックさや煽りを排除し、多様な選択肢をフラットに描く描写へのシフトが現代の標準となりつつある。