教育現場や部活動の指導者を対象にした取材を進めると、スポーツ医科学の知見と現場の慣行との間に横たわる深い溝が浮き彫りになります。
かつて強豪校の運動部で指導を受けていた20代の元アスリートは、当時の手記で次のように現場の過酷さを告白しています。
「『腹筋100回連続で起き上がれないやつは気合いが足りない』と怒鳴られ、腰に激痛が走っても歯を食いしばって続けた結果、高2の秋に腰椎分離症と診断された。一度失った腰の柔軟性は大人になった今も完全には戻らない」
指導現場には、昭和・平成期に定着した「キツい反復運動=精神鍛錬」という精神論の残滓が今なお根強く残っています。しかし、最新のスポーツ科学においては、「目的と負荷のミスマッチ」は単なる指導ミスとみなされます。指導者が最新の運動生理学をアップデートせず、旧態依然としたメニューを盲従させることは、成長期の子どもたちの未来を奪う重大なリスクであると認識しなければなりません。