明治期、銀座の煉瓦街で産声を上げたカツレツは、当初は薄切りの肉を多めの油で炒め焼きにする洋食の技法だった。それをたっぷりの油で揚げる「ディープフライ」へと変貌させ、千切りキャベツと炊きたての白米、そして赤出汁を添える現在のスタイルを確立したのは、日本の料理人たちの類まれな探求心だ。
いまや銀座や赤坂の高級店では、コース仕立てで部位ごとの揚げたてを一切れずつ提供するスタイルも定着。最初の一口は何もつけずに肉本来の香りを吸い込み、次はミネラル豊富な岩塩で脂の甘みを引き締め、最後の一切れにだけ特製ソースを数滴垂らす。単なる大衆食堂のメニューから、職人の美学が宿る日本料理の極致へ。ヒレとロースの特性を極限まで理解した調理法が、食文化としての厚みを確固たるものにしている。