「朝8時半に家を出たら、バイパス手前の交差点ですでにコーンが並べられていて右折も左折もできなかった。結局、住宅街の細い路地に車が数珠つなぎになり、わずか2キロ進むのに1時間以上かかった」
これは、過去の愛媛マラソン開催日に北条バイパス沿線の商業施設に勤務していた松山市山越在住の30代男性が語った生々しい証言です。SNSや地域コミュニティの掲示板を分析すると、大会当日には毎年のように同様の悲鳴が書き込まれています。特に目立つのは、「カーナビの抜け道案内を信じて入り込んだ生活道路でのスタック」です。
国道196号線が遮断されると、一部のドライバーは本町裏の路地や、堀江・和気地区の海岸沿いを通る狭隘路へと一斉に車を流し込みます。しかし、これらの道路は道幅が狭く、すれ違いが困難な箇所が連続します。そこへ大型車やミニバンが進入し、対向車と立ち往生した瞬間、地域一帯の生活道路が完全なグリッドロック(網の目状の渋滞停滞)に陥るのです。現場警備にあたる警察官やボランティアスタッフからも、「無理に突っ込んで身動きが取れなくなる車両の対応に追われるケースが後を絶たない」という苦渋の声が漏れ聞こえます。
都市交通工学の観点から松山市の道路網を分析すると、同市は「松山城を取り囲む環状構造」と「北条・今治へ伸びる単一の強力な放射軸(国道196号)」に過度に依存しています。この放射軸がマラソンによって遮断されるということは、いわば人体の主要動脈を数時間にわたって圧迫止血するに等しい負荷を都市機能に強いることになります。この構造的脆弱性を理解している地元ベテラン勢は、「マラソン当日の日中は車を動かさず、買い物は前日までに済ませる」「移動は自転車か徒歩、あるいはJRを利用する」という自衛手段を徹底しています。