小惑星をめぐる言説の中で、常に話題の中心にあるのがアポフィス(Apophis)です。2004年の発見当初、トリノスケールで一時「レベル4」を記録し、2029年の地球衝突確率が2.7%と算出されたことで世界中に激震が走りました。しかし、その後のゴールドストーン電波望遠鏡等による高精度レーダー観測の結果、2029年、2036年、そして2068年の接近においても地球衝突は一切起きないことが確定しています。
2029年4月13日、アポフィスは地上約3万2000キロメートルの上空を通過します。これは気象衛星ひまわりなどの静止衛星軌道(高度約3万5800キロメートル)の内側を通り抜ける距離であり、欧州やアフリカの一部では肉眼でも観測できる見込みです。科学者たちにとってこのイベントは、災害の予兆ではなく「千載一遇の近接探査機会」と位置づけられています。NASAの探査機「OSIRIS-APEX」がアポフィス接近に合わせてランデブーを予定しているほか、世界各国の研究機関が地上からの総力観測を準備しています。
一方、NASAの探査機がサンプルを持ち帰った小惑星ベンヌについては、2300年までの軌道が極めて精密にモデル化されています。総合的な衝突確率は0.057%(1750分の1)、最も危険度が高い2182年の単一接近時でも約2700分の1です。残された時間は150年以上あり、現代科学の知見をもってすれば、必要に応じて軌道を微修正する猶予は十分に確保されています。