猿沢池を語る上で欠かせないのが、古くから語り継がれてきた「七不思議」の存在である。「澄ままず濁らず」「カエルが鳴かない」「魚が沸かない」といった伝承は、先人たちの観察眼とユーモアが織りなした文化遺産だ。中でも「澄ままず濁らず」という一言は、絶妙な水質バランスを保ち続けてきたこの池のミステリアスな特質を見事に表現している。
さらに、切ない悲恋の物語として知られるのが「采女(うねめ)伝説」だ。帝の寵愛を失った采女がこの池に身を投じたとされる悲話は、今なお人々の情緒を揺さぶる。毎年中秋の名月に行われる「采女祭」では、雅楽の繊細な音色が夜風にのって響く中、鮮やかな花扇を乗せた管絃船が水面を滑るように進む。2026年も伝統の形式を崩すことなく執り行われ、歴史の深みに没入したい旅行者たちを魅了した。