席に着いた瞬間から、観客としての特別な時間が始まる。「おまかせ」の組み立ては、まるで計算し尽くされた音楽のシンフォニーのようだ。極上のつまみから始まり、徐々に高揚感を高めながら握りへと移行する完璧なシーケンス。器の一皿ひと皿にも妥協はなく、骨董の美意識が料理を引き立てる。
行天健二氏の美学は、近年海外ドキュメンタリーやNetflixの食文化番組などを通じても世界へ発信された。言葉の壁を超えて視聴者を魅了するそのストイックな生き様と寿司への愛。カウンター越しに見せる凛とした立ち振る舞いと気さくな語り口のギャップが、訪れる客の心を掴んで離さない。