2026年のドラマシーンを総括する上で、世相的な「思い込み」や「誤解」を冷静に是正する必要があります。その最たるものが、「世帯視聴率が1桁のドラマは爆死・失敗作である」という旧態然とした評価軸です。
たとえば、オードリー若林正恭と南海キャンディーズ山里亮太の半生を描いた『だが、情熱はある』は、全話平均視聴率が4.1%と低調でした。しかし、放送直後からTVer総合ランキングで連日首位を獲得し、Huluのオリジナルコンテンツとの連動でも驚異的な加入誘導実績を記録しました。メインキャストである髙橋海人と森本慎太郎が見せた狂気的な再現度は関係者内でも破格の評価を受け、ギャラクシー賞をはじめ数々の賞を受賞しています。視聴率という単一の「面積」で測る時代は終わり、どれだけ視聴者の生活時間を奪い、感情を揺さぶったかという「容積」で成功を測るべき段階に達しているのです。
また、もう一つの盲点は、視聴者の「タイパ(タイムパフォーマンス)志向」がドラマの脚本作りに与えた功罪です。第1話から即座に事件が起き、3分に1回テンポよく状況が進展するスピーディーな構成が求められた結果、じっくりと人間関係の機微を描くドラマが「テンポが遅い」と切り捨てられるリスクが生じました。『いちばんすきな花』やNHKの大河・朝ドラに見られたような、台詞の行間や沈黙を楽しむ鑑賞習慣を持つ層と、倍速視聴やまとめサイトで「オチと伏線回収」だけを性急に求める層の間で、コンテンツに対する受容の温度差が顕著化した一年でもありました。