岡崎神社が京都屈指の人気神社となった背景には、視覚的な愛らしさだけでなく、千二百年を超える信仰の積み重ねがあります。延暦13年(794年)、桓武天皇の平安京遷都に際し、都の四方に建立された勅願社の一つがこの社です。都の東(卯の方角)に鎮座することから「東天王」と称され、国家鎮護と方位除けの役割を担い続けてきました。
うさぎとの結びつきは、地理的な方角が「卯(うさぎ)」であった点に加え、社殿が位置する東天王一帯が野生のうさぎの生息地であったことに端を発します。古来、多産であるうさぎは神の使いとされ、豊穣と生命力の象徴として尊ばれてきました。貞観11年(869年)には、清和天皇が後継ぎの誕生を祈願して幣帛を奉納し、無事に皇子(陽成天皇)が誕生したという古記録が残されています。この史実が、現在に続く子授け安産祈願の揺るぎない礎となっています。
祭神として祀られているのは、速素戔嗚尊(すさのおのみこと)、奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)、そしてその御子神である三女五男八柱神です。困難を乗り越えて夫婦となり、多くの子孫に恵まれた神話から、子授けのみならず縁結びご利益を求める参拝者にとっても特別な場所として崇敬を集めています。歴史に裏打ちされた切実な祈りの場であることが、観光ブームを超えた支持の根底にある事実を見逃してはなりません。