呉須の放つ独特な青の根底には、極めて精密な無機化学の反応が存在する。その主成分は酸化コバルトであり、これが釉薬に含まれる長石や珪石のガラス質と高温で溶け合い、ケイ酸コバルトのガラス層を形成することで澄んだ藍色を発色する。
興味深いのは、天然鉱物としての呉須と、近代以降に普及した合成顔料との質感の違いだ。かつて中国や中東の鉱山から採掘されていた「天然呉須」には、微量の鉄、マンガン、ニッケルなどの不純物が混ざり合っていた。この複雑な鉱物組成こそが、単調ではないスモーキーで深みのある「渋い藍」を作り出す源泉だったのだ。一方、化学的に純度を高めた酸化コバルトをベースとする「洋呉須」は、極めて鮮明で均一なロイヤルブルーを安定して発色できる強みを持つ。どちらが優れているかという単純な二元論ではなく、現代の作家たちは表現したい器の佇まいに応じて、これらふたつの呉須を巧みに使い分けている。
さらに発色の明暗を決定づけるのが、窯の中の酸素状態だ。酸素を制限して焼き上げる「還元焼成」を経ることで、呉須は濁りのない吸い込まれるような藍色へと昇華する。