韓国ドラマ『ホジュン』が伝説と呼ばれる理由とキャストの現在

韓国ドラマ『ホジュン』が伝説と呼ばれる理由とキャストの現在

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全編を通じて描かれるのは、愚行に塗れた一人の青年が「心医(病気だけでなく患者の心をも治療する真の医師)」へと覚醒していく魂の成長譜です。

若き日のホ・ジュンは、庶子という出自の限界に絶望し、密貿易や自暴自棄な密入国に手を染めるならず者でした。しかし、母親の献身と賢人たちとの出会いを通じて己の愚かさを恥じ、慶尚道の山清で名医ユ・ウィテの内弟子となります。そこでの生活は過酷を極めました。雑用係として何年も冷たい水を汲み続け、薬草採集で命の危険に晒されながらも、ホ・ジュンは愚直に医術の基礎を叩き込みます。ライバルであるユ・ドジの嫉妬や数々の罠に嵌められながらも、師匠の教えを胸に内医院の科挙に見事首席合格を果たします。

宮廷の医官となったホ・ジュンを待ち受けていたのは、熾烈な派閥抗争と政治的陰謀でした。やがて1592年、豊臣秀吉軍の侵攻による「壬辰倭乱(文禄・慶長の役)」が勃発。王族や重臣たちが我先にと逃げ惑う中、ホ・ジュンは命懸けで貴重な医学書を抱えて王の避難行列に合流し、第14代国王・宣祖の絶対的な信任を勝ち得ます。宣祖の御医(主治医)にまで上り詰めた彼は、戦乱と飢餓に苦しむ民衆を救うため、壮大な医学百科の編纂事業を命じられます。

しかし、光の頂点にあれば影もまた濃くなります。1608年に宣祖が崩御すると、主治医としての責任を問われ、反対勢力の糾弾によって流罪(配流)に処されてしまいます。絶海の孤島や過酷な流配地という極限状況にあっても、ホ・ジュンの執筆への情熱は途絶えませんでした。10年以上の歳月と心血を注ぎ込み、ついに全25巻に及ぶ不朽の名著『東医宝鑑』を完成させるのです。

物語の最終回は、涙なしには見られない壮絶な結末を迎えます。赦免されて都へ戻る道を提示されながらも、ホ・ジュンは宮廷の権力闘争に背を向け、貧しい民が暮らす山村へと身を寄せます。そこで診療所を開き、名もなき民衆の治療に余生を捧げていました。しかし、村に恐ろしい疫病(伝染病)が猛威を振るいます。寝食を忘れ、自らの感染リスクを顧みずに昼夜を徹して患者の治療と薬の調合を続けたホ・ジュン。ある朝、診療所の椅子に座ったまま静かに動かなくなった彼の右手には、民の命を救い続けた一本の「鍼(はり)」が固く握りしめられていました。己の全生命を医療に捧げ尽くした殉職の瞬間であり、まさに彼が生涯追い求めた「心医」の理想を体現した伝説のラストシーンです。

清水 千尋
著者

清水 千尋

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。