『遊郭編』の主人公とも言える活躍を見せた音柱・宇髄天元。彼のキャラクター性を語る上で外せないのが、宇髄天元の嫁3人の詳細と、過酷を極めた戦いの末に下した戦線離脱の決断です。
宇髄の妻である雛鶴(ひなつる)、まきを、須磨(すま)の3人は、いずれも優秀な「くのいち」であり、天元を心から愛するパートナーです。冷静沈着で知略に長け、戦闘中にも藤の花の毒矢で妓夫太郎を拘束する機転を見せた雛鶴。短気で勝気ながらも情に厚く、身体能力の高さで帯の鬼に立ち向かったまきを。そして泣き虫で臆病な一面を見せつつも、優れた柔軟性と索敵能力で活躍した最年少の須磨。一夫多妻制という特殊な忍の一族の出自でありながら、彼女たちの関係は嫉妬や争いとは無縁の深い相互信頼で結ばれていました。
天元が一族を抜ける際に3人と交わした約束こそが、「命の順序」の規定です。「まずお前ら三人、次に堅気の人たち、そして俺だ」――忍として命を道具のように捨て去ることを強いられてきた天元が掲げたこの家訓は、鬼殺隊の柱でありながら「生きて戻ること」を最上位に置く異色の美学でした。
そして激闘の末に明かされた宇髄天元 引退理由は、肉体的な限界と次代への信頼でした。妓夫太郎の猛毒により心臓を一時停止させて毒の巡りを止めるほどの極限状態を経験し、左目と左手を欠損。剣士としての第一線を退く決断を下した際、駆けつけた蛇柱・伊黒小芭内からの「若手が育つまで引退など認めない」という辛辣な言葉に対し、天元は迷うことなくこう言い放ちました。「若手は育ってるぜ、確実に」。命を懸けて自分とともに上弦を打ち破った炭治郎たちを信じ、柱としての役目を退く――それは、無駄死にを嫌い、引き際の潔さを知る天元だからこそ下せた至高の判断だったと言えます。