容姿端麗で頭脳明晰、スポーツ万能な出木杉英才という非の打ち所がない選択肢がありながら、しずかちゃん のび太を選んだ理由は何だったのか。この疑問に対する完全な回答が、映画化もされた屈指の感動物語「のび太の結婚前夜」(てんとう虫コミックス第25巻)に集約されています。
結婚式前夜、両親と離れる寂しさに揺れ、「わたし、お嫁に行くのをやめようかしら」と不安を吐露するしずかちゃんに対し、父親(しずかのパパ)が贈った言葉は日本漫画史に残るのび太の結婚前夜 名言として語り継がれています。
「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それがいちばん人間にとって大事なことなんだからね」
映画『STAND BY ME ドラえもん 結婚』のクライマックスでも強調されたこのフレーズは、現代の家族社会学や心理学における「心理的安全性」と「ケアの倫理」に直結しています。
出木杉は一人で何でも解決できる自立した存在であり、しずかちゃんが介入する余地がありません。対してのび太は、自らの弱さを隠さず、他者の悲しみに涙を流せる圧倒的な「共感力」を備えています。しずかちゃんにとってのび太は、依存でも見栄でもなく、互いの欠落を埋め合いながら生涯をかけて支え合える唯一無二のパートナーだったのです。