鯛のあら煮作りにおいて、味付け以上に完成度を左右するのが事前の臭み取りです。鮮魚店やスーパーで売られているアラには、表面のぬめり、取りきれなかった細かいウロコ、そして骨の隙間に残った血合いが付着しています。これらを残したまま煮汁に入れてしまうと、どれほど上質な調味料を使っても魚臭さが煮汁全体に移ってしまいます。
日本料理の現場で必ず行われるのが「熱湯による霜降り(湯霜)」という技法です。具体的には、アラ全体に軽く塩を振って15〜20分ほど置き、浮き出た余分な水分と臭みを拭き取った後、80〜90℃程度の熱湯を全体に回しかけます。表面のタンパク質が白く固まったら、即座に氷水(または冷水)に落とします。
この冷水の中で、指の腹を使って残ったウロコやエラ周りのぬめりを優しくこすり落とし、中骨の周辺にこびりついた赤黒い血合いを流水で完全に洗い流します。この丁寧なひと手間をかけるだけで、魚特有の生臭さは99%以上取り除くことができます。